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救急蘇生委員会
“嘔吐”と“胃内容の逆流”(心停止に対する蘇生中)について
東海大学医学部付属病院高度救命救急センター 
日本ライフセービング協会救命部担当理事 中川儀英 
 

 嘔吐というのは、延髄の嘔吐中枢によってコントロールされる反射である。
この一連の反射運動は次のようになっている。
唾液分泌と吐き気にはじまり、上部小腸の内容物が、逆蠕動により胃に送られる。
声門は閉鎖し、吐物が気管内に吸入されるのを防ぐ。呼吸は吸気時の途中で止められ、腹壁筋が収縮し、腹腔内圧を高める。下部食道括約筋と食道は弛緩し、胃内容物は吐出される。(医科生理学展望 市岡正道ら著 丸善株式会社より)いわば嘔吐というのは生きているときにこそ起きる、生体現象である。
これに対して、心停止傷病者に対し蘇生中に観察される、口腔内への胃内容物の逆流は、上に記したような嘔吐中枢の働きによる一連の反射運動ではない。不適切な人工呼吸や大量に誤飲された水などにより胃が膨満(胃の内圧が上昇)しすぎたために起こる、空気や食物残渣などの胃内容物の単なる逆流、いわば物理的現象なのである。
 慣例的に蘇生のトレーニングには、よく“嘔吐”といわれている。しかし、医学的には“嘔吐”ではないことを強調したい。先に協会から出版した、“心肺蘇生法教本”では、ライフセーバー諸氏に、より医学的に正しい理解を求めたいがため、“嘔吐”という表現はさけ、“胃内容物の逆流”という表現を使用した。