ガイドライン2010速報〜国際ライフセービング連盟声明とJLAとしての対応について〜
JLA理事長 小峯 力
                             救命部理事 中川儀英


The International Liaison Committee on Resuscitation(ILCOR) Consensus on Science and Treatment Recommendation 2010 が10月19日に発表されました。

今回のガイドラインで、一般市民が行なう一次救命処置(BLS)に関して大きく改訂された点は、これまでのAirway-Breathing-Circulationの流れから、Circulation-Airway-Breathingとなったことです。
すなわち、傷病者が意識が無く、呼吸停止もしくは異常呼吸であったら、ただちに胸骨圧迫―人工呼吸30:2を開始することになりました。一般市民は、意識の確認のあとに、気道の確保−呼吸の確認−人工呼吸はやらなくて良いことになりました。

このILCOR2010ガイドライン発表を受けて、国際ライフセービング連盟(ILS)の医科学委員会から、近く、特に溺水傷病者に対するライフセーバーのCPRがどうあるべきかの声明が発表される予定です。

概要は次のとおりで、AHA(アメリカ心臓病学会)とERC(ヨーロッパ蘇生協議会)のガイドラインを紹介しながら、ILSの考えを示しています。

 

<ILS medical committee statement>
 
AHA

溺水による心停止の場合は、従来どおりのA-B-Cアプローチを行なうべきである。一番重要な処置は、溺水による心停止では低酸素になっているため換気をただちに再開することである。即座にrescue breathを行なうことは溺水傷病者が生存できる可能性を高めることに繋がる。反応のない傷病者はただちに水から引き上げ、気道を開通させ、呼吸をチェックし、もし呼吸が無い場合は、2回のrescue breathを行なうべきである。

 
ERC

(溺水の場合)訓練された救助者やプロフェッショナルは、胸骨圧迫と一緒にrescue breathを行なう。
ほとんどの溺水傷病者は低酸素による心停止に陥っており、この場合、compression-only CPRは効果がほとんど無く、避けるべきである。
溺水傷病者に対して真っ先に行なう最も重要なことは、低酸素状態を改善することであり、できるだけ早くに5回のrescue breathsを行なう。

溺水による死亡の一番の原因は、窒息、すなわち無酸素状態である。酸素がないままの血液を循環させても、原因解決にはならない。溺水傷病者は、すぐにも酸素を必要としている。

AHAとERCでは溺水傷病者に対して、異なる回数のrescue breathを推奨しているが、ILSとしては、少なくとも2回のrescue breathを行い、その後はそれぞれの国におけるガイドラインに従うものとする。
また“溺水傷病者に対するCPR”についてのILSの声明(2008年4月)を参照されたい。

 
以上がILSの考え方です。
溺水による心停止では低酸素状態が本質的な病態であるために、血液を酸素化させる処置、気道確保+人工呼吸が必要で、従来どおりのA-B-Cが重要な意味を持つわけです。
JLAとしては、日本のガイドラインの発表後に、改めて方針を発表しますが、溺水の場合にはILS声明と大きく変化しないと考えます。ここで注意していただきたいのは、溺水の場合に対して、という条件のもとでの議論であるということです。陸上で突然発症した心停止の場合には、ILCORのようにC-A-Bが推奨されるでしょう。このようにどのような傷病者か、条件によって対応が少し変わってくることになろうかと考えられます。